布団に入って目を閉じたら
気の抜けた月が浮かんでいられなくなって
コンクリートに衝突してバラバラになる姿を想像する。
破片が四方に飛び散って
電柱とか自動販売機とか家とかが
傷だらけになって
世界中に絆創膏が貼られて
絆創膏の匂いがする街を歩く。
足音がおたまじゃくしの呼吸の泡のように
ぷかぷかと浮かんでは弾けて
傷だらけの風景ごとめくられる。
あの子がテスト用紙の角を
犬の耳をつくるように折り曲げた理由は
最後までわからなかったけれど
思い出の表面を滑ると
自分がもう死んだような
気持ちになるのは何でだろう。
自分が良いなって思うものが
沢山ある世界で良かったと思うと同時に
公園の遊具を見ると悲しくなる。
クーラーの音しかしない部屋。