何を書こうかなと思うとき

太宰治が文章を書くコツのひとつとして
「好きな人に話しかけるように書くといいよ」
と言ったらしいので、

だから僕も
恋多き死にたがりの文豪にあやかって
好きな人に向かって書くことにする。

と、宣言したものはいいものの
正直に言うと
僕はいま何を書けばいいかわからない状態で、

それこそ好きな人をはじめて
デートに誘ったはいいものの

何を話せばいいかわからず、
小さく微笑んだまま固まっているような
そんな状態。

「誰かに何か伝えたいことを伝える」
っていうのが文章の掟なのだとしたら
その掟を真っ向から否定している。

たぶんそれは僕に書きたいと思うものが
何もないからで、

ただ書きたい
「何も伝えたいことはないけど
君のそばにいたいんだ」

という気持ち悪い感情が
静電気みたいにパチパチと迸っているだけ。

頭の中は、大量の墨汁が流し込まれた金魚鉢みたいに暗闇だ。
書くことがないのだから仕方がない。
でも、それが心地良い、と思っているくらいには
精神も肉体も死へと近づいている。

あ、そうだ、話は変わるんだけど、
今日「トマトイプーのリコピン」という
ギャグ漫画の4巻を読んでいたら

ペレー棒かぶって丸メガネをかけて
一眼レフをぶら下げて
「自分では普通だと思うんだけど
映画の趣味は合わないんだー」っていうキャラクターが出てきた。

それを聞いた主人公の彼女は、
「あ、ごめん」と崖まで走っていて
「個性的に見せたい部分がありきたり過ぎて
逆に無個性な奴ぅ〰」と全力で叫ぶという王様の耳はロバの耳方式のツッコミが入っていて
笑ってしまったんだけど

それがファッションではなくて本当に好きなものなら
どんなマイナーなものだろうが、どんなアンチがいようが
自分がどう思われようが
「好きです」と言えるくらいには
人間関係に対するどうでも良さが強くなっています。