斜めに書かれた住所

地面に落ちてひっくり返ったセミ
足を動かして鳴き続けようとしているのは
最後の瞬間まで生き続けようと抗っているのか

それとも
「おはよう」とか「こんにちは」とか「こんばんは」とか
人に会うと自動で発せられる言葉のような
ただの習慣や癖のようなものなのか
わからないけれど

顎先から落ちていた汗が
マスクで遮られて
何もない空間に落ちていくように

夜と朝が交差する瞬間は
青から赤に変わりゆく信号機の「点滅」を
乱暴に引き伸ばした「滅」の時間のように
寄る辺のない気持ちにさせる。