- 作者: 梅崎春生
- 発売日: 2016/02/02
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最近読んだ小説のなかで一番うまい、という文章をネットでみて読んでみることにした。おもしろかった。戦争中の桜島で、暗号解読をする兵士が主人公。緊迫した状況と、死に対する思考の流れが、文章を追うことを飽きさせなかった。
文章もテンポが良くて、かなり読みやすい。70年前以上の作品なのに、言葉が死んでいない。
ジャンルとしては戦争文学なのだろうが、テーマは「死」なんだと思う。
たとえば「桜島」のなかには、自殺をしようとする老人が出てくる。何度も転びながらようやく縄をかけて死のうとしたら、孫がじっと老人を見ている。10分間くらい見つめあったあと老人は諦めて縁側にいって、ざあざあ泣くシーン。
これが見張りの見た光景として語られる。
読んでいて目に浮かぶくらいリアルだった。
「桜島」は細部のエピソードがすごく印象的なのだ。だから飽きさせないのだし、おもしろいのだと思う。
ただ、ツクツクボウシのところは出来過ぎのように感じてしまった。まあ、そこらへんを差し引いてもかなりの名作だと思う。