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田山花袋「蒲団」雑感想 1907年

読まないとして名は聞いたことある小説が多い。「蒲団」なんていうのはその代表格ではないだろうか。蒲団をくんかくんかする変態おっさんの小説として有名である。ぼくも変態おっさんの話だと思っていた。
しかし、読んでみたら違った。
おっさん自体は変態だった。いまでいうところのメンヘラなのだと思う。メンヘラおっさんである。
問題は、くんかくんかされる蒲団に寝ていた芳子の方である。
簡単に関係性を説明すると、芳子は主人公である小説家(竹中時雄)の弟子だ。
時雄に手紙を送りつけまくって弟子になった。
自分のなかでは芳子は文学少女のイメージがあった。
事実、文学をやっているわけだからね。
でも、違うのです。
今風で言えば、ギャルでありビッチでありパリピに近い生き物なのである。
具体的には、夜遅くまで男友達と遊び歩いたりする。しかもそのせいで警察が家の前まで来たりする。
しかも結婚前にやっちゃったりする。これはいまでは当たり前かもしれないけど、当時としては最先端だったんだろ。
「蒲団」は、メンヘラおっさんと、ビッチ女子大学生の話なのだ。
おっさん(時雄)のメンヘラっぷりが際立ちすぎていて、芳子のやばさが埋もれているだけ。
とはいえ「おい芳子おまえやべえな」と思っていた僕も、中盤くらいから彼女に同情し始めた。
というのも芳子に恋人ができたのだ。そこから芳子はだいぶ落ち着いたような感じである。
が、芳子のことが好きな時雄の精神状態はヤバイ。時雄のせいで芳子がかわいそうな感じになる。
まず、時雄は酒を飲みまくる。飲みまくったあげくに、芳子のもとへ行こうとする。
その道中に、奥さんのことを思って「前はめっちゃ好きだったんだけど、いまは芳子のことしか頭にねえわ。でも恋ってそういうもんじゃない?」とかほさぐ。
芳子と恋人とのやりとりの手紙を普通に盗み見る。
あげくのはてに恋人の家に押しかけ、やんわりと「別れた方がよくね?」と言う。
勝手に恋愛事情を、芳子の親にバラす。
と、なかなかである。
一時は「ここは引いて。ふたりの恋を応援してやるか」とも思ったりするのだけど、普通にぶちこわす。
で、父親がやってきて芳子は恋人と別れて田舎に帰ることになる。
芳子は時雄の家の二階に住んでいたわけなんだけど、芳子がいなくなったら時雄はそこ行く。別れたあとそのまま二階に行く。
ここからが有名なシーン。蒲団くんかくんか。でも違った。
蒲団ではなく、夜着でした。

 夜着の襟の天鵞絨の際立って汚れているのに顔を押附けて、心のゆくばかりなつかしい女の匂いを嗅いだ。(p110 田山花袋『蒲団・重右衛門の最後』新潮文庫

想像のワンランク上でした。しかも汚れているところですから、なかなかのマニアックぶりですよね。
そのあと丁寧に蒲団をしいて、丁寧に夜着をかけて、顔をうずめて泣きます、このおっさん。
確信犯ですよね。あとぼくがね、「蒲団」を読んでいて確信犯だなあと思うのは、やたらめったら海外の自然主義文学の小説やら小説家の名前をあげることかな。「これ自然主義の小説ですよー」アピールがすごい。深く関わっているのならいいんだけど、そうでもないという。
なんだかんだ言いましたが「蒲団」おもしろです。まともな感想も書けたら書きます。

蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)

蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)